プレストレストコンクリートとは

プレストレストコンクリートの説明をする前に,普通のコンクリートの性質について説明します。

コンクリートの性質

普通のコンクリートは,圧縮力(押される力)に対しては強く,引張力(引っ張る力)に弱いという性質を持っています。

その力の差は約10倍で,100キロの重さに耐えて壊れないコンクリートの固まりも,10キロの重りを下げただけでひび割れ,壊れてしまいます。
コンクリートの性質

曲げの力(曲げモーメント)

ところで,橋桁として橋に架かるコンクリート桁は,横に長い形をしています。

曲げの力(曲げモーメント)橋桁には橋である以上,当然橋を渡る人や車の重さが「荷重」としてかかってきます。

木の板でできた橋をイメージしていただくとわかりますが,だれかが橋の上に立つと木の板がたわみます。コンクリートは固いので想像しにくいことですが,車が乗ったりなど上にかかる荷重が大きければ同じようにたわもうとします。

このたわむ力を曲げの力(曲げモーメント)といいます。曲げの力によって,曲げの内側には圧縮力が発生し,曲げの外側(橋桁であれば下側)には引張力が発生します。

先ほど説明したとおり,コンクリートは引張力に非常に弱い性質を持っていますので,コンクリートの橋桁に曲げの力が加わると,そこに発生した引張力によって橋桁は木のようにたわむことなく簡単に壊れてしまいます。

コンクリート桁

コンクリートから引張力を少なくする工夫

コンクリートが引張力に弱いのであれば,引張力を発生させなければ,壊れにくいコンクリート桁を作ることができます。

鉄筋コンクリートという言葉でおなじみのように,鉄筋を橋桁のコンクリートの中に入れることで曲げの力による引張力に対抗することもできます。

ただし,鉄筋はコンクリートに作用する引張力を負担してくれますが,引張力によるひび割れを完全に防ぐことはできません。

コンクリートにひび割れができてしまうと,コンクリートの中へ水が入りやすくなり鉄筋が錆びてしまうこともあります。

そこでプレストレストコンクリートを使った橋がつくられることになりました。

鉄筋コンクリート桁

 

プレストレストコンクリートとは

プレストレストコンクリートとは,Pre-stressed(pre=前もって,stressed=圧力をかける),つまりあらかじめ圧縮力をかけたコンクリートのことです。

コンクリートの中に入れたPC鋼線を引っ張ることで,コンクリートに圧縮力をかけてしまいます。

すると,プレストレスをかけた橋桁に上から荷重をかけても,あらかじめかかった圧縮力のおかげでコンクリートがひび割れることはありません。

万が一,大きな荷重がかかってひび割れが入ったとしても,水平方向に圧縮力がかかっているおかげで荷重がなくなればひび割れも閉じてしまいます。

プレストレストコンクリート桁

 

このように便利なプレストレストコンクリートは,橋だけではなく貯水タンクなど様々な場所で使われています。

皆さんの周りにある構造物もプレストレストコンクリートで作られたものかもしれません。もしよかったら探してみてください。